10月8日、第6回陶芸アマコン大賞の発表及び受賞式が、清水焼展示場にて行われました。
全国から351作品が集まり、「創作部門」・「食器部門」に分かれて審査。結果、35点が入賞、216点が入選。それぞれの部門から大賞が選ばれました。
今回はその大賞受賞者の方々に、喜びの声を聞いてきました。
●アマコン大賞受賞 創作部門
作品:「矩形波」
作者:岩出卓さん(京都市、47歳)
初出品にして大賞受賞という快挙を成し遂げたのは、岩出卓さん。入選は期待していたものの、流石の大賞にはびっくりしたとか。「妻が電話を受けた際、“アマコンですけれど”との声に、“尼崎コンクリート”の略かなにかと勘違いして“何のコンクリートの件でしょう?”と思わず応えてしまったそうです(笑)。それくらい私も妻も予想外のものでした。喜びよりも先に、まさかという驚きで一杯でした」
岩出さんが陶芸を始めたきっかけは、義母に勧められてとのこと。2年ほど、陶芸教室に通った後は、自ら電気窯を購入。仕事の忙しい合間を縫って、自宅で創作活動を続けている。「陶器は、粘土で形作る自由さ、焼いた時の変化が面白いですね。仕事とは別に集中できるものがあるというのは、気分転換にもなります」
受賞作品は、「矩形派」。
「四角い形のものを組み合わせたら面白いものが出来るんじゃないかという発想でした。まず小さなモデルで作ってみたら、結構面白く仕上がったのでそれで行こうと。いかに形を崩さずに直線の組み合わせができるかに手間をかけました」幾何学的な模様がモダンで、オブジェにぴったりな作品だ。
「形のイメージが決まった食器などの実用品よりも、自分のイメージを形にする方が好きです。次回作は、とりあえず大きな賞をもらったので、今のところは思いつかないですが、創作活動は続けていくつもりです」
●アマコン大賞受賞 食器部門
作品:「淡水波状紋長方皿」
作者:上野光雄さん(大阪府茨木市、70歳)
幾度の入選経験を経て、見事大賞を受賞したのが、上野光雄さん。陶器歴13年、10年目にして初個展を開くなどのベテランだ。 「陶器を始めたきっかけは、定年を迎えようかという頃、第二の人生をぶらぶらして過ごすだけではあかんと思って、陶芸教室に通い始めたことです。もともと陶器が好きといったわけでもなかったのですが、進路の一つとして、教室を覗いたとき、これを新しい人生にと決意しました。」
3年間基礎を教える陶芸教室に通った後、窯を購入し自宅を工房に。また、文化教室の陶芸教室にも通っており、陶芸教室仲間と窯場見学へ行ったりするなど、陶芸生活を楽しんでいる。
受賞作品は、「淡水波状紋長方皿」。
「家の近くに、安威川(あいがわ)という川があるんですが、その河川敷の拡幅工事の際、粘土を採取したのが、この作品を作るきっかけでした。100パーセント地元の土で、川の模様もその安威川をイメージしました。」 川の優しい流れを想起させるような、さわやかな色が印象的だ。
「食器も創作系も作りますが、道歩きながら、イメージを膨らませたり、設計図を描きながらあれこれ考えたり、作っている瞬間が楽しいですね。アイデアがひらめいたら造る、そんなペースで続けていきたいです」
総評:今回のアマコンは、技術的にレベルの高いものが集まりました。8割が出品経験者という割合で、連続出品の経験が生かされたこともあり、これがアマチュアの作品かと感嘆するような作品が多く見られました。ただ、そういう技術の高さが、若干このコンペを物足りなくさせているという印象もあります。なぜなら、やはりアマチュアの世界、陶芸教室に通ったり、陶芸を趣味でされている方が殆どだと思います。それゆえ、アマチュアらしい、もう少し自由な造形、遊びを取り入れた面白い作品があっても良かったのではないかと感じています。
初期のアマコンは、たとえ技術的にプロには及ばずとも、プロが思いも付かない発想を持った作品が多く見られ、面白かったことを思い出します。今は綺麗な形、綺麗な色を目指す傾向が強いですが、それは、プロでこそ磨かなければならない方向ではないでしょうか。土はどんな形にもなり、どんな色の表現も可能になっています。次回は、アマチュアならではの、自由な発想や個性、遊びのある作品を期待したいと思っています。(実行委員長 谷口正典)