西側エントランスは登り窯のイメージ。赤土の壁を抜けると、そこは、京焼一色の世界。
100軒以上の窯元、作家の作品が洗練されたディスプレイで飾られる、ギャラリー洛中洛外。
ひとつとして同じ物が無い作家たちの個性に魅入っていると、「お茶でもどうぞ」と、抹茶とお菓子を出してくれる。店員さんがその人のイメージや好みに合わせて選んでくれるという、お茶碗。その肌触りの心地よさに、身も心も贅沢な気分で満たされる。
「何より気軽にゆっくりと、入ってもらいたい。お茶を出すのも、ほっと一息ついてもらって、京焼の良さを知って欲しいからなんです。それに、我々は時代の流れにそって常に伝統から新しいものを提案していかなあかん立場。訪れてくれる様々な方の、生の声を聞くことも必要です。」
そんな生の声を聞く場には、陶器通の店員さんが揃う。若手作家から人間国宝まで、2000近くある焼き物を、一人で選ぶのは大変。 それを、値段や好み、お祝いごと等の種類に合わせて、気軽にサポートしてくれる存在がいると頼もしい。
「お客さんと話をしていると、逆に“焼き物にこういう使い方があったか”と、教えてもらうこともありますよ。陶器は、生活のゆとりを楽しむものの一つ。それぞれの楽しみ方を見つけてくれればと思います」
(店長 妹尾さん)
もてなしの心が何よりも嬉しい熊谷さんのお店。
年4回の企画展や個展、季節に添った展示替えがあり飽きのこない演出や思いは、ギャラリーの造りにも現れている。
数奇屋造りのイメージは京の家。京都御所清涼殿、桂離宮にならった土壁。千家十職の一人に漆塗りを頼んだという茶室、立礼の間など、京文化の随が散りばめられているのだ。
特に、圧巻なのが2階展示室の「洛中洛外図」。国宝上杉本の屏風を、京焼の技術で、見事に復元した陶板画が展示されている。プリントではなく、全て手書きで絵付けされたという洛中洛外図は、500年前の京の表情を、鮮やかにとらえている。
「絵付けの技、焼きの技で、これほどのものが京焼でできるんです。触ってみるとたくさんの釉薬が使われていることがわかります。是非触れて、昔の京都の人々を感じてください。本物の国宝ではこんなことはできないですから(笑)」
今のところ、半分のみの展示だが、2005年春には、制作が完了しギャラリーで披露される予定。今後は、『源氏物語図屏風』をテーマにイベントや企画をだしていきたいという。
「多くの人に、京焼の魅力を知ってもらいたい」という熊谷さんの言葉。ギャラリーへの思いはこれからも変わることなく、私たちをもてなしてくれるに違いない。
「お茶碗、湯のみ、お皿と、焼き物は全部そろえないと意味が無いと思っていませんか。決してそうではありません。箸置きひとつ変えるだけで、毎日の食事の雰囲気が変わり、生活が豊かになる気がする。そんなちょっとした喜びを見つけられるのが陶器の魅力です。
“高価なもので敷居が高くて、知識が無いと買えない”といったイメージがどうしても先行してしまう焼き物。少しでも気軽に入れる場所があればと作ったのが、このギャラリー洛中洛外です。
自分のお気に入りの焼き物に出会う、ちょっとした喜びを探しに、ギャラリーを訪ねていただければと思います」