卸商として東京・東北方面向けに京焼・清水焼を扱う山本商店。団地内に直売用店舗を構えており、お店を訪ねると、人気作家作品の他、オリジナルデザインで彩られた華やかな器たちが目に止まる。
作家の手塚央さん、加藤雲泉さん、馬場京泉さん、双楽窯の品々が所狭しと無造作に置かれている。丹念に描かれた古典紋様の染め付けの食器類が重厚で存在感があり、お店の魅力の一因となっている。
その中で当主 和義さんの妻、嘉子さんの着想で創られた桜・パンジーなど花々をモチーフにした華麗で繊細な珈琲碗皿・ワインカップなどが目を惹く。お店全体の品々を魅入ってしまうと時間の経つのも気にならない。“ゆっくりと寛ぎながら、ご満足いただける品選びの場を心掛けている”という。
「現代は、“他にないもの”を創らないと売れない時代。何でも満ち足りていて、何でも持っていらっしゃる方がお客さまとしてお見えになりますから、“いかにしてお客さまに喜んでもらえるか”」を常に想像すること、それは常に新しいものを提案することでもあるという。
花のちりばめ方や色使いなど、女性らしい感性が陶器へと見事に昇華される嘉子さんの商品たち。山本商店へ嫁ぐ前は、上場企業で一般職に従事していたというキャリアウーマン。デザイナーの経験は無く、当主の和義さんと二人でお店を切り盛りしていくうちに、自然とデザインにも携わる様になったという。
制作のヒントになるのは、生活の中にあふれているそうだ。デパートであったり、レストランであったり、旅行先のホテルであったりその時々で見かけた洋服や着物、偶然に歩いた石畳など、嘉子さんにとっては日常生活全てがデザインのきっかけになる。
「綺麗なものは、どんなものでも共通する感覚があると思うから、何でもヒントになるんですね。どこへ行くにしても “何かヒントを持って帰ろう”って思いますね。」
嘉子さんのデザインで試作品ができあがると、今度は和義さんの出番。卸商の当主として培われ、研鑽してきた目で、嘉子さんのデザインが、商品として売り出せるかどうかを入念に見定める。
「商品化を反対される場合もありますよ。でも、やりにくいと思ったことはありません。私が作ったものを評価してくれる目があることが大事なんです。お互い補い合う関係として、それぞれの得意分野を発揮できてるんじゃないかと思っています。」
まさに夫婦二人三脚だ。これからも、二人で作り上げる陶器が、店内を華やかに引き立てていくに違いない。
京都の陶器の魅力とは、商品一つ一つが生きているように感じられること。完成までに、ろくろ、成形、素焼き、染め付けという風に、たくさんの職人さんの手が入り、それぞれの職人さんが、魂を込めて作ってくれています。
使ってみると、なおさら良さが分かります。手に持って良し、盛り付けても良し。多少欠けても捨てがたい魅力がある。作り手たちの気持ちを感じられるからこそなのだと思います。