狩野さんは、卸売業の山亀商店を創業した狩野信夫さんの長男として生まれた。
父、母と忙しく働く姿を見て育った狩野さんは、高校生の頃から荷造りをしたり、春休み夏休みは休み返上で手伝った。18歳になると真っ先に運転免許を取得し、学校から自宅へ帰るまでに窯元へ商品を取りにいったり、配達したりと、忙しい毎日を過ごしたという。
卒業後は、家業に専念した。
「父親は、感謝の気持ちを忘れたらあかんとよく言ってました。お客さんや職人さんがいてこそ成り立つ商売やからと。現在は、他にないものを創らないと売れない時代。常に目新しい想像と提案を心掛けています」
山亀は、卸売業として全国の百貨店や小売店を主な顧客とする。季節ごとに見本商品をたずさえて、関東方面へと売り込みにいく。
見本は窯元、色絵それぞれの得意とする商品の動きを勘案し、創られたものだ。
「感性の高い仕事が清水焼の特徴です。同じ仕事でもみんな違い、目移りするくらい大変種類が多いんです。そこに職人さん一人一人の手仕事があって、手間と時間をかけ、丁寧に手描きされているかどうかを評価する目が必要なんです。私の役割は、そんな目を働かせながら、清水焼の伝統的技法に新しい感覚を加え、一人でも多くのお客様に買ってもらえるような商品創りをすることです」
丁寧にこつこつ手描きされていく呉須の色合いや色絵が他ではできないこと、職人さんの技術が磨かれていてこそ創ることが出来るのが、京焼・清水焼の魅力です。それをお客さんに感じてもらえるような、説得力のある商品を創り出していきたいと思っています。