マルニ清水陶磁器は、陶器商として100年以上もの歴史を持つ。うどん、そば、ラーメン、食堂といった業務用の和食器、洋陶器を中心に、「本家尾張屋」「本家河道屋」「本家田毎」など京都を代表する老舗から、ここ10年のあいだで店舗数を急激に伸ばしてきた「来来亭」まで、時代に応じて顧客の幅を広げてきた。
3代目の長男に生まれた清水さんはもともと、店を継ぐ気は全くなかったという。10年以上もの間アパレル業界に身を置き、店を経営するなど順調に歩んでいた。そんな矢先、父親が急病で倒れ、他界。引き継ぎも十分になされぬまま、清水さんは陶磁器店をたたむことも考えたという。
ある時、得意先から「注文を取りに来なくて困っている。一体どうなっているのか」という電話を受けた。長年付き合いのある老舗からは、「お前はどうするのか、継ぐのか継がないのか」と、突きつけられた。
「そんなことがあって、自分がせなあかんのやと。陶器商として代々続いてきたDNAが私のなかにもあったのかもしれません」
そうして、清水さんはアパレル業界を去り、4代目を継いだ。
33歳の頃だった。
清水さんが当主となって現在、4年ほどが経過する。不況の影響もあり、以前からの得意先を守るだけでは、店が立ちゆかない。清水さんは、名詞の肩書きを「営業」として、自ら積極的に顧客の新規開拓に走り回る日々を過ごしている。
「どこにいってもアンテナを張り巡らしています。通りがかりに新規に開店する店を見つければ、飛び込み営業にいきます。新しい店舗はないか、ネットで調べたり、最近は居酒屋や焼肉店、お好み焼き店といったジャンルのお店にも営業をかけています。フード業界のセミナーにもよく顔を出しています」
「不況でも、成功しているお店は必ずある」と、清水さんは断言する。そこを見逃さず、自分がいかに動いていくか。商談成立へとこぎつけるまでのプロセスをいかに楽しむかも、大切なポイントだ。そこには、「どんな仕事であれ、成功の秘訣は、人と人との付き合い方にある」という、清水さんの哲学が源流にある。
「まず、お店の経営者と仲良くなる。従業員の方からこっそり社長の誕生日を聞いてサプライズプレゼントしたり、飲みに行ったり、そうやって懇意になって、信頼関係を築いていくんです。そうすれば、仕事が取りやすくなるだけでなく、知り合いのお店を紹介してもらうことにもつながる。飲食店は横のつながりが結構ありますから、紹介してもらえると、営業範囲もどんどん広がります」
人と人との心の通い合いから、信頼関係が生まれ、ビジネスへとつながっていく。経営者がどんな個性の持ち主か。自分がどう工夫して接すれば、信頼してもらえるか。
今日もどこかで、アンテナを張り巡らせては奔走する、清水さんの姿がある。
仕事柄、様々な陶器を扱いますが、清水焼はそのなかでもナンバーワンの技術を誇っています。不況のあおりを受けて、清水焼の業界も厳しい状況ですが、情熱を失わずに陶器作りに励む作家さんや窯元さんがいる限り、積極的に清水焼の売り込みたいですね。当社オリジナルブランドの立ち上げなどを模索しながら、歴史ある伝統技術を積極的にアピールしていきたいと思います。