清水焼の郷探訪

「清水焼の郷探訪」は2005年頃から2010年頃までに外部記者が取材された内容をまとめたものです。日時や名称など現状と異なる点もございます。予めご了承ください。

第21回

土に込める 和みと安らぎのメッセージ

宮本博

  • 1958年 京焼の窯元に生まれる
  • 1978年 京都市立日吉ヶ丘高校陶芸科卒業
  • 1979年 京都市工業試験場卒
  • 1980年 京展入選・京都府工芸美術展入選
  • 1982年 日展入選・日本新工芸展入選
  • 1983年 中日国際陶芸展入選・日本新工芸近畿展読売新聞社賞・京都府工芸美術展奨励賞
  • 1984年 全関西美術展第一席・京展京都新聞社賞・日本新工芸展新工芸賞
  • 1986年 全関西美術展審査賞
  • 1988年 朝日陶芸展新人賞
  • 1991年 個展(阪神百貨店)
  • 1993年 日本新工芸展会員佳作賞(外務省買上)・ファエンツアビエンナーレ入選
  • 二人展「日、伊 色の響艶」(ギャリー伯美)
  • 1995年 個展(三越大阪店)同'00
  • 1997年 個展(ギャラリー久里)
  • 1998年 日本新工芸近畿展市長賞
  • 1999年 日本新工芸展審査員・全関西美術展審査員
  • 2003年 個展(高島屋大阪)
  • 2005年 日本新工芸近畿展商工会議所会頭賞

志 ambitions

 祖父の代より九谷から京都へ移り、昭和30年代に作陶地として栄えている泉涌寺にて独立開窯した父親を持つ宮本博さん。
 父親の主な仕事は、京焼の代表格である仁清・乾山などの生地を焼き窯元として抹茶茶碗、花器、香炉などの茶道具を中心に作陶し、とりわけ得意としていたのは、仁清抹茶碗だったという。
 宮本さんは、少年の頃より手伝いを始め、高校は美術高校の陶芸科に進んだ。その経歴から、家業を継ぐことへの固い意思が感じられるが、本人は意外にそうでもないと首を振る。
 「“陶芸家になるんだ”というような、大きな意思は持ってなかったですよ。なりゆきでそうなったという感じです。高校も、勉強が嫌いやったんで、陶芸を選んだというだけ。」

 卒業後は1年間、工業試験場で釉薬を学んでから、家業を手伝うようになった。おそらく、そのまま続けていくだけでも生活は成り立っただろう。だが、20歳の頃、宮本さんは、自身の言う「なりゆき」から離脱する。陶芸家としてより強い意志を持つようになったのだ。
 「ちょっと反抗心もあったんでしょうね。親父とは、ちょっと違うこともやってやろうと。このまま仕事やってても面白ない。かといって他のことができるわけやないから、今できることは何やと。そう考えたとき、展覧会に挑戦してみようと思ったんです。」

 外からの評価で生まれる刺激は、自身の作陶に広がりを与えた。窯元としての仕事の要求も増え、父親が手掛けたことのない、大物の壷などにも応えられるようになる。家業にとどまることなく、独自性を見出していったことが、宮本さんにとって面白みへとつながっていったのだ。
 「評価されることに怖さはありません。20代のやり始めた頃は、葛藤がありましたけどね。どうやったらええのか、これでええのかと、随分悩みましたけど。今は、あんまりないんとちゃうかな。徐々にそんな気負いからは、開放されていましたね。」

技 skills

 宮本さんの創作スタイルは、土を彩色し色土にしたものを、成形の段階で模様として表していくこと。途中で曲がっていたり大胆に歪めてあったりと、全体の形は変形したものが多いなか、しっかりと均整がとれているのは、手ロクロの技術が優れているからこそだ。
 「ロクロは、丸を綺麗に作るための器具なので、歪な形を作るのには手びねりが向いています。でも、私の場合、形の制限にとらわれず、今までやったことのない形をロクロで表現したいというのがあります。思いきって切ったり曲げたり、ヒビや傷が出ないように気をつけますが、失敗もよくあります。」

 「好きなことをやってんのかなと言う気はします。苦しくもないし、何時間やってても飽きないし、これでいいということも絶対無いし。できてしまったら、手放したくないという作品は今のところない。明日、焼きあがる作品を手元におきたくなるのかもわかりませんけどね。」

声 voices

 大切にすると、陶器は残ります。残そうと思えば、100年もそれ以上も。だからこそ、責任を持って作らなあかんと思っています。
 買ってくれた方が孫の代まで使っていただけたらいいなと。そう思いながら、作っていきたいと思います。

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