まばゆいまでに純金をちりばめた絢爛豪華な色絵茶碗。過度に華美すぎず、風格を失わず。
三代目加藤利昇さんの作品は、色の鮮やかさといい、金の艶といい、本物だけが放つ輝きで、私たちを魅了する。その芳醇さをたたえた作品からは、利昇窯として茶陶の世界を代々研鑚してきた歴史があるのだろうと想像していたが、意外にも、茶陶専門となったのは、三代目が始めたことだという。
初代二代目とも、もともとは一般食器の染付を生業としていた。利昇さんが茶陶を志すようになったのは、茶道を習い、のめりこんでいく内に、「やるからには上を目指したい」と思い始めたことにある。そこから、染付の世界だけでなく、ろくろ、染付、色絵、乾山、交趾と、様々な技法を独自で習得していった。だが、千家十職に表わされるように、しきたりと由緒を重んじる茶道は、非常に門戸の狭い世界。利昇さんにとって、道を切り拓いていくことは並々ならぬ苦労があったに違いない。
「『作品を一度使って見て頂ければ幸福に存じます』と何回も足を運び、又、お知り合いの方に紹介していただいても、ダメな時はダメ。『よし』と言われるまで、どんなに月日が流れたか。でも、我が道を行くで、進んだ限りは突っ走る。転んでは立ち上がってを繰り返しました」
そんな日々がようやく実を結んだのは、志して五年ほど経った時だ。
「現在では、両千家様からもお書付けをいただくほどにまでなりました」
あらゆる技法を網羅し、京焼の写しだけでなく、オリジナルの絵柄を多く手掛けている利昇さんの作品は、何十回もの工程を経て作り上げられる。光沢のある美しい色絵を表すには、何回も焼成を重ね、金や銀を施す時は、金彩部を何度も瑪瑙で磨きあげる。すべて手作業のため、完成をみるまでに多大な時間を費やすという。だからこそ、思い描いた通りに仕上がった時の喜びは格別だ。
「焼いてみないとどういう風に出るかはわかりません。思い通りにいった瞬間は、顔つきがぱっと変わりますね」
間近に迫った陶器まつりでは、茶陶を販売予定。この機会に、利昇作品を堪能してはいかがだろうか。
私が「茶陶をやりたい」と言ったとき、父親は反対しました。難しい世界だと悟っていたからでしょう。
やり始めたことは、仕事にならなくて悩んだ時期もありました。しかし、そんな時でもヒントになるものを求めて本を漁り勉強するなどの努力は怠りませんでした。
今も、上を目指す精神は変わりません。常に新しいものを作り続けるため、創作の日々は続いています。今では二人の息子も一緒に作陶に励んでくれています。