赤、白、黒、黄…焼くことでまた、がらりと色を変える。この不思議な地球の産物、土はなんと豊かな色を持っているのだろう。
「同じ地球から生まれているのに、場所によっても粘土層によっても全然色が違うんです。つまり、それだけ気の遠くなるような数の種類が土にはある。私たちはそこから、陶芸に適した原土だけを選んでいくんです」
昭和3年創業の陶芸用粘土専門店、「泉陶料」4代目、泉吉次さんは話す。家族経営で生み出される土は、白色系粘土、赤色系粘土、磁器土、粉末粘土など、実に40種類。備前焼や、信楽焼のように、土が産地の名前になる世界とは違い、作家によって使う土が違う清水焼。これほど多くの種類をそろえるのは、「作家一人一人の声に応えたい」からだ。九州、岐阜、瀬戸、三重県、韓国へと、泉さんは、原土を求めて鉱山に赴く。
「今までええ土が採れてたのに、急に採れなくなることだってありますから、常に採掘場には足を運びます。原土は、本当に変化が激しい。継いだ頃は、それが難しくて。今は、変化する土と格闘するのが、面白くもあるし、やりがいにもなってます」
粘土作りは、完成まで多くの工程を経る。採掘場で採れる原土が、そのまま粘土になるのではなく、まず数種類の原土を配合。
「ミル」と呼ばれる機械ですり潰し、不純物を徹底的にふるいに掛け取り除き、目の粗さを整える。それをさらに均一になるように混ぜ、「フィルタープレス」という脱水機で水分を抜いた後、最後に土錬機で土を練りあげて完成させる。
一度にできる土は2トン。それが10kg単位で、市場に販売されていく。10kgは、湯呑茶碗が30~40個くらいの量だ。
手触りなめらかで使いやすい粘土になるかどうかは、特に、第1段階の原土の配合が決め手。そのブレンドの妙技は、職人の勘によってのみ生み出される。
「確かに計量はするんですが、季節によって水分量が違うでしょう。冬場などは土が水を多く含んでいるから、夏場の重さと同じ、というわけにはいかない。計りをあてにばかりしてはいけないので、自分で培う勘が必要になってくるんです」
「ええ土とはなんでしょうか?作家さんそれぞれが土にも個性を求める清水焼にあって、それは、ブレンドも自由にできる柔軟性も持ちながら、単体でも使いやすくて、よく手に馴染む土であるでしょう。作家さんはそこから、自分の味を出していきます。土はあくまで脇役に徹せねばなりませんが、どんな作家さんに対しても名脇役であるような土作りを、私たちはめざしているのです。
2002年には、ネットショッピングの楽天にも出店。客層は京都だけでなく、全国各地の陶芸家から、陶芸教室、陶芸をリハビリの一環とするデイケアセンターなど、趣味の範囲へとさらに広がりつつあります。
土に親しむ方が増えていくにつれ、私たちも数年しか粘土層が持たない限定土や、新作の提供など、新しい土を研究していきたい。
ただ奇をてらうのでなく、“誰の手にも合う、味のある土”を、変わらず追い求めていきたいと思っています。」